DETAIL
静かな山の中にいると、心が穏やかになる一方で、ふとした瞬間に「何か」が潜んでいるような不安に襲われることがあります。
誰もいない山道を歩いているとき、突然茂みが揺れたり、風とは違う気配を感じたりすると、つい足が止まってしまいます。僕自身、そんな経験を何度もしてきました。それでも大きな熊鈴をぶら下げて常にチリンチリンと音を鳴らすことには抵抗があり、ついつい鈴を家に置き去りにしてしまうことがありました。
不安を感じるときは、トレッキングポールを「カツン、カツン」と叩き合わせて音を出したりしますが、やはり限界があります。
そんな体験から生まれたのが、この『min.bell』です。
まるでお守りのようなコンパクトなサイズで、持ち運びも苦になりません。さらに特別にこだわったのは、その音色です。軽く揺れるだけで響く透き通った鈴の音は、山の静けさを邪魔することなく、自然の空気に優しく溶け込みます。
不安な静寂に包まれた時にも、『min.bell』の澄んだ音が心地よく響き渡り、自分の存在をさりげなく知らせてくれます。使わない時は静かにポケットにしまっておける、控えめなデザインに仕上げました。
もちろん、『min.bell』を持ったからといって熊との遭遇を完全に防げるわけではありません。科学的には熊鈴の効果について議論があり、効果が絶対的とは言い切れないことも事実です。鈴の音に熊が気づいて回避した事例がある一方で、確実に遭遇を避けられる保証はありません。
しかし僕は、熊鈴は不意の遭遇を少しでも防ぐための「心の支え」だと思っています。完璧を求めるなら、声を出す、複数人で行動する、大きな音を意図的に出すなど、他の対策も併せて行うことが効果的です。
熊鈴の最も効果的な使い方は、「何もしないよりずっと良い」という気持ちで携帯することだと思います。
【真鍮】
真鍮は銅と亜鉛の合金です。その歴史は紀元前1,000年頃からと古く、ローマ帝国では通貨の材料に用いられ、奈良時代の日本では中国伝来の真鍮製品が正倉院に納められました。現在、もっとも身近な真鍮品には5円硬貨があり、インテリアや建築金物の他、澄んだ音色から仏具や楽器としても親しまれています。能作では、すべての真鍮製品を職人の手仕事でつくっており、仕上げによってさまざまな表情を持たせています。
Spec
素材 : 本体部分、真鍮 三角カン部分、鉄(メッキ加工)
サイズ : 高さ25mm×横20mm(本体のみ)
重量 : 約20g(付属のSビナ含む)
生産国 : 日本
生産者 : 富山県高岡市 株式会社能作